His Story 22

His Story22

ポルトガルへの旅行と機を同じくして、自費出版のお手伝いをしていました。

以前、このブログでもお話しした彫刻家のAさんの奥さんから、Aさんの夢であった作品集を作りたい、との相談を受けたのです。

Aさんのご逝去から5年ほど経っており、あれから遺作展も開催しました。この度、大阪空港のそばにあったアトリエも閉鎖するので作品集の発売とともに、アトリエで最後の遺作展をやりたいとのことでした。

私は自分の専門知識が活かせるし、Aさんへのご恩返しの気持ちもあって引き受けさせていただきました。一度、本作りを体験してみたいとも思っていました。他にも本のデザインや、データ作成をしてくれるデザイナーのMさん。作品の写真撮影をしてくるOさんと奥さんを入れて4人のにわかプロジェクトです。私は全体のコーディネートを担います。

私は、作品集は小さく品のある感じに仕上げたいと思っていました。モデルは光村推古書院の写真集のシリーズです。この出版社の「月」という写真集が好きだった私はB6 変形、ソフトカバーのこの本を奥さんに見せて、こんな感じにしたい、と伝えました。

Aさん自身も、あまり華美な作品集にはしたくなかったらしく、この本をモデルに進めていくことになりました。

まずは出版社を決めます。自費出版ですが、是非とも書店流通させたかったので本の問屋さん(日販さんやトーハンさん)と取引のあるところで作りたいと思いました。でもやっぱり、光村推古書院さんで出せたらいいなぁ、と思っていたので自費出版はやっていませんが、話は聞いてくださるとのことだったので、京都へ向かいました。

社長さんに経緯を詳しくお話をしたところ、うちでやれないこともないですが、一応見積もりを出します。と言ってくれました。しかし、予想はしていましたが、その見積もりは予算を大幅に上回るものだったのでした。お断りは致しましたが、でも、まぁ、一応当たってみるだけ当たってみたので、満足でした。それに社長さんとはこの後、いろんなところで顔を合わせることになりました。

自費出版をしてくれる出版社は調べればたくさん出てきますが、どこも、うーん、って感じでした。正直なところこだわっているのは私だけでした。色々思いあぐねた挙句、「牧歌舎」という出版社さんに決めました。大阪に事務所がありますし、いろいろこだわりも聞いてくれそうです。

Mさんの事務所で打ち合わせをして、そのまま契約を交わし、いよいよ本づくりが本格化します。まずは作品の撮影をします。Oさんがいいカメラや機材を借りてくる手筈を整えてくれました。スタジオを借りるかどうか悩みましたが、スタジオのレンタル料や作品の運搬を考えると費用面で難しく、結局Aさんのアトリエで行うことに決めました。

すでに販売して手元にない作品は、購入者に連絡して協力をお願いして、ご自宅に撮影に出向くことにしました。幸いにもほぼほぼ関西にあったのでなんとか撮影に周ることができました。仕事の都合で夜中に伺うことがあったのですが、撮影が終わってもAさんの思い出話に花が咲いて、辞去したのが午前3時ということもありました。

撮影の前にだいたい構成は考えていて、撮影するものも掲載する候補のものにかぎって撮影し、作業を省力化しました。実際に撮影をしたものをみると色々できるなー、と想いが広がります。丸一日かけて撮影して、次はMさんに原稿を作ってもらいます。

普段は原稿作成用のソフトはインデザイン などを使うのですが、Mさんはいつも仕事でイラストレーターを使っているので、今回はイラレで原稿を作っていきます。

写真の修正が最小限になるように撮影はしましたが、やっぱり色々と不具合が発生していて、Mさんは写真の修正に大変でした。みんな自分の仕事の合間にやっています。私は自分の中のアイデアをこーしたい、あーしたいとMさんに伝えるのでそれも大変です。

作品選びは主に奥様にお願いしましたが、やはりあれも入れたい、これも入れたい、となるのを宥めすかして減らしてもらい、厳選して掲載していきます。娘さんが思い入れのある作品群はページを割いて用意して、Mさんに上手にデザインしてもらいました。

私がこだわったのは、  の部分。Aさんのスケッチをデザイン化してまるで模様のようにあしらってもらいました。Aさんの作品を作る前のラフスケッチはとても素敵です。ここから数々の作品が生まれたと思うと、このラフスケッチもぜひ活かしたいと思いました。

なんとか、原稿が出来上がり、入稿です。後は出版社さんがやってくれます。しばらくして、色の確認をすることになりました。印刷すると、原稿との色合いが違います。実際に印刷所に出向いて、色のチェックをします。印刷されたものを見ると、本当に色が違います。Mさんが細かくチェックして、調整をお願いして印刷GOとなりました。

そしてやっと、本が出来上がりました。

本のタイトルは『WINGS 』です。Aさんと奥様の作品集が出来上がりました。

刷った本の大半は、手元に届きましたが、書店から注文を受けた分は書店にも配本されました。もちろん、ジュンク堂書店難波店にも入荷しました。自分の作った本が、自分の働いている書店に並ぶ。それはとても嬉しい瞬間でした。

本の発刊に合わせて、遺作展も開催しました。場所はAさんが作品を産み続けてきたアトリエです。この遺作展を最後に、アトリエは閉鎖します。Aさんにお世話になった方々がアトリエの片付けを手伝ってくださり、作品だけが並んだアトリエに、次々とお客さんがやってきます。

皆さんが本の完成を喜んでくださり、購入してくださいます。Aさんの思い出を語りながら、名残惜しそうに、作品にもアトリエにもお別れを告げます。でも皆さんの手元にはAさんの作品集が残ります。いつでもAさんに会うことができるのです。

本のもつ事象の側面を垣間見たような感じでした。


以前のブログはこちら→https://tukuyomi.info/blog/

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