His Story 16

本部事務所時代

当時、本部事務所は心斎橋にありました。9F建ての自社ビルでとても立派なものでした。

私は、この時初めて9:00〜17:00の平日勤務・土日が休みという典型的な勤務時間を経験しました。毎朝ラッシュの電車に揺られて通勤して、本当にサラリーマンらしい会社員生活でした。

改革を続ける旭屋書店の様々な施作を、私は言われるままに手伝っていました。今から考えると現場の意思を全く反映していない、考え方によるとちょっと迷惑な施作にも加担してしまいました。

出店攻勢をかけていた時だったので、新しい店舗ができる時は地方へ出張に出かけていました。人手の足りない店舗の応援にもよくいきました。でもやっぱり気分は塞ぎがちでした。

ぼんやりした毎日を送っている時に、泉南地域にあったお店の洋書がほったらかしになっているとのことだったので、週に1回訪問して、入荷した本を入れたり、発注したりするのを手伝っていました。そして、大規模な棚のレイアウト変更を深夜にするとのことだったので、私も参加させてもらいました。

こんな大変な作業に、手を上げてやるなんて、気分が塞がっていると言いながら勝手なものです。面白そうな仕事には率先してやるのです。私は病気でもなんでもないのです。なんだか殻に閉じこもって、誰かがなんとかしてくれるのを、文句を言いながらウダウダしているだけだったのです。

自分にはできることや強みがあるのに、それには一才目を向けず、理想とする無理な自分像に憧れて、それが叶わない人生を呪って、好意を向けてくれている人のことを信じられず無視し続けている人間でした。

自分を評価してくれる人に向かっては「こんな自分を評価するなんて、この人は大したことのない人だ」などと、本気で思っていました。今から当時の自分のことを思うと、なんともったいない過ごし方をしていたものだと思うのですが、この卑屈な時代はまだしばらくは続くのです。「失われた十何年」は始まったばかりでした。

それでも持ち前の真面目さから、言われた仕事はこなし、出張にもでかけて棚を作っていました。でも虚無感や疲労感ばっかりたまっていきました。そうこうしているうちに、組織改変で異動になり、梅田曽根崎にある本店へ異動となるのです。

続く


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