His Story 13

桃山店時代(2005〜2006)

悶々として、鬱屈した日々が続く中、京都市伏見区にある桃山店へ店長として赴任するよう内示がありました。

この頃の私は、胸ポケットにいつも辞表を入れて出勤していました。未来に希望も持てず、ただただ自分の不甲斐なさを嘆くばかりで何も行動を起こさず、できない理由ばかり並べ立てる。そんな自分にますます自信がなくなっていました。

私は内示が出た時、これ以上は限界だと思って、当時の店長に胸の内を吐露して、泣きながら辞める意思を伝えました。しかし、店長は自分にもそんな時代があったことを打ち明けながら、私の強みを列挙され「もっと自信を持つように」と励ましてくれました。

その、励ましを受けて私ははじめての店長職を引き受けることになったのです。

桃山店は近鉄百貨店系列のモール「MOMO」の中の一角にある200坪ほどの店でした。オープンしてからどれくらい経っているのか定かではありませんが、くらい感じの店でした。社員は私を入れて二人。そのほかのスタッフは13名。

お店のオペレーション自体は整っていたのか、整えてくれたのか少人数でも回るようになっていましたが、本部からの人件費削減のため私がきた時には更にさらに一名減の状態でした。この頃よりどのお店を対前年を上回ることが難しくなってきており、桃山店も同様でした。

お店の棚下のストックは返品できなくなった商品でいっぱいでした。どうもオープン時に専門書の品揃えを充実させたのでしょう。地域のニーズには合わなかったようです。

ストックルームにはお店に出しきれていない実用書が山積みになっていました。実用書はもう一人の社員の担当です。前任の店長曰く、「本人に自覚を持たせるためにあえて放置している」とのことでした。

前任の店長に言わせれば仕事の段取りが悪い、ということなんでしょうが、私もあんまり段取りがいい方とは言えないですし、何よりも商品は店に出さない限り売れませんから、そこから手をつけようと思いました。

相方の社員さんは、やはり社員であるので色々雑事で忙しいので、とりあえず、学生パートの子を一人、早出してもらってその実用書の山を何日かかけて取り崩して、棚に出してもらいました。これだけでもストックルームはスッキリしました。

それでも売り場の方の実用書ですが、平台に穴が目立ちます。(書店では平台に置いている本が売れて商品がなくなっている状況を「穴が空いてる」と表現します)担当者がメンテナンスが忙しくてできないようです。でも、私も忙しいのでできないです。

そこで、当時はこの規模の店なのに、まだ取次(本の問屋さん)の担当者が時々きてくれていたので、その方に、「なんでもいいから取次にある在庫を穴の数だけ各5冊ずつ入れてください」とお願いしたら、その通りにしてくれて、きてくれる度にそれをしてくれました。

売れ筋の本を追いかけて、それを切らさないように補充するのが書店の仕事の基本ですが、追っかけられないから、追っかけるのをやめて穴を塞ぐことに集中したわけです。

これが功を奏したのか、実用書の売り上げは伸び始めました。

後から考えると、桃山店は郊外店なので、元々2桁売れるような商品はコミックやベストセラー以外あまりありません。5冊くらい売れると、止まります。お客様も基本同じお客様が来られます。つまり、来るたびに目新しい商品があるので、購買につながったのかなぁ、と思います。

でも、もっとちゃんと追いかけられたら2桁売れる本も作り出せたのかもしれません。

イベントも色々とやってみました。ゾロリの着ぐるみを借りたり、出版社さんが企画したお客様の性格診断のイベントを何回か実施しました。これが好評で、関連本がたくさん売れました。

良く覚えているのが、ディスカバー21さんの『こころの持ち方』という今でもロングセラーの本があるのですが、当時の営業担当者さんが「試しにいいところにおいてください」という言葉を信じて販売したところ、郊外書店なのにものすごく売れたのを覚えています。(販売数は忘れた……)営業担当者さんと一緒に売った、という気持ちでした。

そして、年間予算を僅かながら数%UPすることができました。月によっては旭屋書店全店舗でたった2店舗しか対前年比を上回ることができなかった中で、そのうちの1店舗となったこともありました。

なのに……。

続く


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