His Story 12

京都店時代(2002~2004)

帰国後、配属された店舗は京都店でした。

当時、JR京都駅の北側に近鉄百貨店京都店(プラッツ)があり、その7Fに旭屋書店京都店がありました。坪数は900あまりあり、大型店舗でした。今はその跡地にヨドバシカメラがたち大垣書店が入っています。

私はこのお店では学習参考書・理工書・人文書・洋書・季節商品係と様々経験しますが、社員人員が削減され始めたら担当は全部取り上げられて、実質的に副店長のような仕事をしていました。

この店でとても思い出に残っていることは、若い学生バイトのみんなとたくさん交流できたことです。仕事が終わるといつもご飯を食べに行ったり、いろんな話をしました。私は彼らとはひとまわりほど年が離れていましたが、一緒になっていつも楽しく話をしていました。

この中に、愛知東部の老舗書店H堂の御曹司Tさんもいました。今の彼は社長を勤めておられますが、書店業界に対する真摯な姿勢は、当時では想像もできませんでした。

旭屋書店京都店には大きなイベントスペースがあり、そこを活用したくてうずうずしていました。そして私は手作りイベントを何個も企画・実施しました。

覚えている手作りイベントは

当時、英語力維持にためにTOEICの勉強をしており、その先生だったK先生にお願いしてTOEICの無料講座をしました。(現在このK先生は有名なTOEIC参考書のロングセラー作家です)この頃、TOEIC受験者はうなぎのぼりで増えており、無料というだけあって、すぐに埋まってしまいました。

イベント的には成功で、参加者も喜んでくれて本も売れましたが、先生への謝礼を差し引くと売り上げ的にはトントン。利益を考えると赤字。私の人件費を考えると大赤字。といった感じで書店イベントの難しさを感じました。が、ここは大きな書店の強みとして捉え、何個も開催して、集客することをよしとして、どんどんイベントをやっていったのです。

二つ目は 夏休み自由研究ショー です。

夏休み前になると小学校の自由研究の本がたくさん発行されます。(現在はだいぶ減りましたし、売れなくなりましたが……)その中の工作系や実験系のものを再現し、お客さんの前で披露するのです。

学生バイトを巻き込んで、準備物は私の家に泊まり込んで作って、リハーサルをしました。

百貨店の担当者も協賛してくれて、チラシに載せてもらうと問い合わせが多数あり、当日はたくさんのお客さんが集まりました。、私が司会をしてバイトくんがみんなの前で実験をします。実験の結果を見た子どもたちやお客様が「おお〜っ」と歓声を上げる面白いイベントになりました。

3つ目は当時、「駅前留学」のキャッチコピーで有名だった英会話学校NOVAとタイアップしたフェアを企画しました。

旭屋書店京都店英会話フェアと銘打って、イベントスペースをいっぱい使ってやりました。

語学書を並べることはもちろんですが、当時人気のあったNOVAウサギのキャラクターグッズや家庭用洋画ビデオに英語の字幕をつける機械などの教材も販売しました。NOVAの出張英会話体験教室を期間中に行って、お客様にネイティブ講師との英会話を体験してもらいました。もちろん、その後NOVAさんの勧誘はありますけど……。

NOVAさんも、書店とコラボするのは初めてだったので、お互い刺激になりました。

しかし、開催中に百貨店側から「百貨店のイベントとして相応しくない!」とクレームが入り、あわや中止かと思いましたが、当時の百貨店側の旭屋担当者の方がとてもいい人で、なんとかとりなしてくださり、最後までやることができました。

……、がしかし、色々とみんなでやるものの、なぜか虚しい思いが消えませんでした。いくらやっても自信がつかず、逆に自信がなくなっていくような感じです。その思いは日に日に大きくなってきて、疲労感や徒労感、無力感に苛まれるようになりました。

自分が何をしていいのかわからなくなり、仕事へ行ってもそんな姿が見られないように倉庫にずっとこもっていたりしました。普通に楽しく過ごせる時間もある傍ら、悶々とする時間も少しずつ増えていきました。夜も眠れなくなって、あてもなく考え続ける日々が続きました。

この頃から、出版不況が肌身に感じられるようになりました。残業が制限され始め、元々基本給が少なく、残業で稼いでいるようなものだったので、少しずつ削られていっているような感覚でした。

もう辞めようかな……、とか思い始めましたが、何の資格もなく、高卒で、自分が望むような転職は不可能だとわかると、こんな仕事でもやっておくしかない……、とあきらめモードに入っていました。

この頃に、確か社員研修がありました。前にも言った通り、この業界は従業員教育にあまり熱心ではありません。しかし前述の部長が、従業員教育を実施してくれたのです。外部のコンサルタントを入れ、本格的な研修でした。

泊まりがけの研修もありました。お寺みたいなところで精進料理を食べ、朝に坐禅を組んだ覚えがあります。チームで企画を立てて、役員の前で発表する、というような研修でした。

この頃、旭屋書店は全国に出店攻勢をかけていて、人材育成と確保が急務だったのかもしれません。システムも整えていて、本部事務所の2Fには大きなサーバーがウンウン低い唸り声をあげていました。

通販事業に、文具やCDの扱いなどに力を入れ始め、何か変わっていく期待と不安が入り混じった時期でした。

続く


以前のブログはこちら→https://tukuyomi.info/blog/

お問い合わせ